紙パ技協誌
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研究報文
二酸化塩素漂白中のAOX生成を評価するためのヘキセンウロン酸の調製
眞柄 謙吾池田 努細谷 修二柴田 泉磯貝 明
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2009 年 63 巻 4 号 p. 417-425

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抄録

二酸化塩素漂白において,ヘキセンウロン酸から生成するAOX量を評価するため,その標品となるヘキセンウロン酸基の調製を検討した。
4―O―メチルグルクロノキシランまたはセロウロン酸ナトリウムをアルカリ水溶液中で加熱処理することにより,ヘキセンウロン酸基を調製した。キシランは2.5mol/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液中150℃で60分間加熱する必要があり,225μmol/gのヘキセンウロン酸基が調製された。セロウロン酸ナトリウムは,1mol/Lのアルカリ中120℃で30分加熱するだけで,345μmol/gのヘキセンウロン酸基を調製することが可能であった。この,キシランとセロウロン酸ナトリウムの間の調製条件の差異は,両者のアルカリ水溶液中での溶解性に起因すると考える。
アルカリ中での加熱処理によりキシランやセロウロン酸ナトリウムから調製したヘキセンウロン酸基を用い,その二酸化塩素処理において生成するAOX量を検討した。アルカリ処理キシランは二酸化塩素処理条件に応じて5―7μmol/gのAOXを生成した。そのうち,約3μmol/gはキシランに含まれるヘキセンウロン酸以外の二重結合を持つ化合物,例えばリグニン―炭水化物結合に由来するリグニンなどによるものであった。リグニンから生成したと考えられるAOX量を差し引いた場合,生成したAOX量はヘキセンウロン酸基の9―16mol%に相当した。アルカリ処理セロウロン酸は,アルカリキシランより多くのAOXを生成し,それは含まれるヘキセンウロン酸の24mol%に達した。
また,二酸化塩素処理時間を15分から120分に延長した場合,アルカリ処理キシランおよびアルカリ処理セロウロン酸とも,生成AOXは15分処理の約50%に減少する結果が得られた。
以上のことより,セロウロン酸ナトリウムから調製したヘキセンウロン酸が,リグニンの影響を受けず,かつ反応性が高いという点で標品としての使用に適していると結論した。

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