紙パ技協誌
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研究報文
キノン添加修正クラフト蒸解におけるキノン化合物の作用動態(第1報)
―クラフト蒸解におけるキノン化合物の分布―
田中 潤治大井 洋横山 朝哉松本 雄二
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2009 年 63 巻 4 号 p. 426-436

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抄録

ユーカリ材の修正クラフト―キノン蒸解を研究用蒸解装置で行い,添加したキノン化合物が反応系内でどのように分布しているか,また,蒸解の進行に伴いそれがどう変化するかを調べた。キノン化合物は3種類(9,10―アントラキノン(AQ),9,10―アントラヒドロキノン(AHQ),1,4―ジヒドロ―9,10―ジヒドロキシアントラセン(DDA))を用いた。
蒸解を停止して得た黒液と蒸解チップを3つのフラクションに分別し,各フラクションに含まれるキノン化合物成分をAQとして定量した。3つのフラクションはチップ外の黒液に含まれる部分(A),チップを洗浄した液に含まれる部分(B),洗浄したチップをクロロホルムで抽出して得た部分(C)とした。クラフト―AQ蒸解の場合,蒸解初期では添加量に対して約47%のAQがチップ内部(B+C)に分布していた。蒸解中期では,フラクションAは大きく減少したが,フラクションCはほとんど同じであった。クラフト―AHQ蒸解およびクラフト―DDA蒸解の場合,クラフト―AQ蒸解に比べてフラクションBの分布が小さく,フラクションCの分布が大きかった。このことにより,AHQおよびDDAはAQよりもチップ内へ浸透しやすいことが示された。また,キノン化合物を含む白液を蒸解途中で添加した実験も行った。その結果,キノン化合物を含む白液を蒸解開始時に添加した場合よりも,フラクションCへの分布は減少した。したがって,蒸解途中で添加したキノン化合物は,蒸解チップ内部に浸透しにくいことが考えられた。

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© 2009 紙パルプ技術協会
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