紙パ技協誌
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パルプ特集
水質から見た苛性化工程の障害と対策
小笠原 啓隆
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2010 年 64 巻 5 号 p. 532-537

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抄録

近年,化石エネルギー由来のCO2排出量削減を始めとする環境問題への関心が高まり,さらに重油価格の高騰や世界経済が変化する状況から,製紙工場全体へのエネルギー供給源であるクラフトパルプ(以下,KP)製造プラントを安定に操業することは,環境負荷低減だけでなく生産コストの増加を防ぐ意味で重要になっている。
KP製造プラントは,パルプを生産しながら,黒液としてエネルギーを回収し,蒸解薬品をリサイクルする効率的な設備構造であるため,いずれの工程における障害もプラント全体の操業に影響を与え,生産性を低下させ得る。その中でも,苛性化工程の障害は,白液生産量低下に伴うパルプ生産量の低下や,石灰泥脱水不良に伴う石灰焼成キルンにおける重油使用量の増加,即ちCO2排出量の増加と生産コストの増加につながる。
また,緑液ラインは,苛性化工程において最初の工程であるため,パルプ生産量の変動に伴うスメルト生成量や回収ボイラの燃焼効率などの操業変動を受けやすい。そこで,本稿では,緑液ラインの操業安定化が苛性化工程およびKP製造プラントの安定化にとって重要と考え,その障害と対策について紹介する。

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© 2010 紙パルプ技術協会
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