2011 年 65 巻 9 号 p. 906-911
白液の電気分解によるポリサルファイド(PS)製造技術,および蒸解工程をはじめとするクラフトパルプ(KP)プロセスへの,この技術の応用について紹介する。
KPにおいて収率の向上は重要なテーマであり,古くからPS蒸解が実用化され,また修正蒸解が実用化,発展してきた。しかしながらこれらの要素を単純に組み合わせることは合理的ではなく,完成度の高い収率向上技術の実現を求めて,当社では新規PS製造技術として1996年より白液電解法の開発に取り組んできた。本法では極めて高効率でPSを生成することができると共に,高純度の苛性ソーダが副生するという特徴があり,白液の分割添加を基本とする修正蒸解と組み合わせることで,理想的な収率向上技術となる。また副生する苛性ソーダは,酸素脱リグニンなど蒸解以外の工程にも活用でき,非常に完成度の高いKPプロセスを実現できる可能性がある。
本稿ではこれらの具体例やアイディアと共に,白液電解の技術的な課題と,その解決に取り組んできた開発経緯について述べる。