紙パ技協誌
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研究発表会特集
パルプリジェクトを用いたバイオエタノールの製造に向けて
岸野 正典折橋 健原田 陽
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2013 年 67 巻 11 号 p. 1248-1251

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抄録

北海道では,環境を活かした経済の活性化を目標に,豊富に存在するバイオマス資源を活用したバイオエタノールなどの輸送用エコ燃料の製造・供給拠点の形成に取り組んでいる。
北海道にある8ヵ所の製紙工場から多量に発生しているパルプリジェクトは,製紙原料として循環利用されるとともに,工場内のボイラー燃料として焼却処理されているが,バイオエタノールの原料に適していれば,木質バイオマスを原料とした,バイオエタノールなどの輸送用エコ燃料の製造・供給拠点の形成が実現に近づくこととなる。
本研究では6種類のパルプリジェクトの性状,糖化性,糖液の発酵性等を調査した。パルプリジェクトには,酵素糖化の基質となるセルロースがいずれも50%以上含まれ,酵素糖化の結果,リジェクトに対して50~70%,リジェクト中のグルカンに対しては93~116%の収率でグルコースを得た。また,得られた糖液の発酵試験を行い,著しい発酵阻害がないことを確認した。一方,糖化性の向上に向け,粒度毎の糖化率を調べた。その結果,解繊により2mm以下の画分を増やすことで,糖化性を向上できることが分かった。結論として,クラフトパルプ工場からのパルプリジェクトはバイオエタノールの原料として適していた。

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© 2013 紙パルプ技術協会
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