紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
研究報文
高品質多孔性填料の開発(第1報)
―粒子物性が嵩高性および不透明性に与える基礎検討―
山本 学若狭 浩之岡田 比斗志
著者情報
キーワード: W5填料, S1紙の性質一般
ジャーナル フリー

2013 年 67 巻 2 号 p. 178-184

詳細
抄録

多孔性填料(沈降性シリカ)は,近年では,その比重の低さを特徴として,紙の嵩高化(軽量化)を目的とした充填剤(填料)としての使用量が一段と増加してきている。多孔性填料の使用には,機械パルプのような褪色の問題もなく現設備で対応できるといったメリットがある。しかし,紙力の低下をもたらすといった問題も残っている。そこで我々は,紙力の低下が小さく,さらなる嵩高性能の付与,かつ不透明性に優れた新規な高品質多孔性填料の開発を試みた。具体的には,珪酸ナトリウムと鉱酸を直接反応させる直接酸分解法を基本原理として,本研究により得られた多孔性填料の粒子物性が紙力,嵩高性および不透明性に与える影響について述べ,本多孔性填料の有用性を明らかにした。
すなわち,以下に示す知見が得られ,求められる紙質に適合した各種高品質多孔性填料を製造できることが示唆された。
1)珪酸ナトリウム濃度,硫酸ナトリウム濃度,温度,中和比率,攪拌速度の反応条件を制御した結果,様々な粒子物性の多孔性填料(沈降性シリカ)が製造できる。
2)嵩高性に最適な一次粒子径が存在することがわかった。また,一次粒子径を大きくし,可視光の半波長である200~400nmに近づくことで,二次凝集粒子の光散乱度が高くなり,紙に含有した際の不透明度も向上する。
3)一次粒子径を調整し,二次凝集粒子の細孔表面積を小さくすることにより,紙力剤の多孔性填料への吸着を抑制でき,紙力の低下を防止することができる。

著者関連情報
© 2013 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top