近年,天然木材を利用して石油由来素材と置換し,低炭素社会実現を目指す研究開発が盛んに進められている。
本研究では,再生可能な資源であるセルロースを石油由来素材の置換補強材料として配合し,軽量で高強度な材料を創製する事を目的とした。本報では,パルプ及びセルロースナノファイバー(以下CeNF)をプラスチック(汎用性の高いポリプロピレン樹脂)へ配合した素材の特性について報告する。
混練機として二軸スクリュー混練押出機とセルロース混合可塑化成形装置を用いた。
分散性は,セルロース混合可塑化成形装置で得たサンプルの方が,分散状態,及び弾性率において優れており,混練方法の違いがプラスチックの特性に影響することが判った。樹脂の破断は,パルプ凝集物が起点となっており,混練物の均一性の重要性を示唆した。分散剤の添加により,分散度は高くなるが,マイクロオーダーのパルプ凝集物が散在しており,更なる分散度の改善を要す。
強度は,セルロースを配合することにより,弾性率が高くなることが判った。
流動性は,CeNFを混練するとメルトマスフローレイトが高くなり,成形性が改善されると期待される。
またパルプ種によって最適なセルロース繊維のナノ化(解繊処理)度合いが異なることが判った。
今後の課題は,プラスチックの補強材用途として更なる分散性の改善と最適なセルロース繊維のナノ化度合を探求することである。