紙パ技協誌
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新入社員歓迎号
新規歩留用ポリマーの設計
林田 豪一村田 奈穂吉岡 芳美峰岸 由希子
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2014 年 68 巻 4 号 p. 389-393

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抄録
近年,古紙配合率の拡大や用水のクローズド化によって抄紙原料中には微細繊維,灰分,アニオン夾雑物といったものがますます増加傾向にある。この状況下において,既存の歩留向上剤は効果不十分である場合が多い。複雑多様化していく抄紙原料に対応する新規な歩留向上剤を設計するためには,これまでの分子量やイオン性の議論にポリマーの構造や絡み合いの観点を加えていく必要がある。本報告ではこれらの制御により紙料性状に対応した最適なエマルジョン歩留向上剤が得られたことを報告する。
従来構造のポリマーは凝集力向上のために分子量を上げていくと絡み合いによって電荷の反応性が低下するという問題があった。微細繊維分を多く含む系においては電荷の反応性は重要な因子と考えられる。よってポリマー構造と絡み合いを制御し,凝集力と電荷反応性を高いレベルで両立することを検討した。
開発品はGPC―MALS測定によって構造の差異が確認され,溶液の粘性挙動からは絡み合いが低減していることが示唆された。またポリマー電荷の反応速度を測定し,反応性の向上を確認した。
微細繊維分の異なる紙料を用い,歩留試験を実施した。従来品は微細繊維分の増加に伴って効果が不良となったが,開発品は高い効果を保った。また実機抄造においてもその効果は確認されている。
これらの結果は開発品が設計通りに微細繊維への高い反応性を持ち,近年の紙料性状に対応して効果を発揮することを示している。
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© 2014 紙パルプ技術協会
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