紙パ技協誌
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研究報文
異なる樹種の混合チップの蒸解挙動
扇谷 浩石藤 雅俊
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2018 年 72 巻 11 号 p. 1286-1290

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抄録

品質の異なる複数のチップを混合してパルプを製造する際,蒸解条件を最適化したり,得られるパルプの収率や品質をコントロールしたりするには操業状況を見ながらの調整や現場の経験に基づく調整によるところが大きい。そこで,異なる樹種のチップを混合して蒸解した際のパルプの品質や収率を事前に予測し,最適なチップ配合や蒸解条件を設定することを目的に混合したチップの蒸解実験を実施した。

実験用のオートクレーブを用い,蒸解性の異なるEucalyptus globulusチップとAcacia mangiumチップとをバスケットに入れて混ざり合わない様にして一緒に蒸解し,それぞれのチップから得られるパルプを別々に回収して評価した。その結果,2種類のチップが共存してもそれぞれのチップの蒸解挙動は,各チップを単独で蒸解した場合の挙動と同じであり,混合して得られたパルプのカッパー価は,それぞれのチップから得られるパルプのカッパー価をその混合割合での加重平均した値とほぼ同じ値になった。また,収率についてもカッパー価の変化に対する収率の挙動は混合して蒸解しても単独で蒸解しても樹種毎に同じ挙動であった。

これらのことから,複数のチップを混合しての蒸解挙動は,混合したそれぞれのチップの挙動を評価,把握しておけばどの様な樹種をどの様な割合で混合しても推定できる可能性があることが示唆された。

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© 2018 紙パルプ技術協会
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