紙パ技協誌
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総説・資料
TMPプレートデザイン最適化による品質向上の実現
石川 聡
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2018 年 72 巻 5 号 p. 477-480

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抄録

TMP工程の磨砕電力原単位削減は,コストダウン・省エネルギー推進の観点から継続的に取り組むべきテーマである。特に,導入するプレート特性で得られる省エネ効果とパルプ品質向上は重要な課題として検討されてきている。日本製紙釧路工場でも長年にわたり,さまざまな省エネプレートを試行している。

今回,磨砕電力原単位の削減に加え品質向上の取り組みとしてアンドリッツ社の従来にない特殊なプレートデザインを採用した。

1次磨砕では従来型プレートとは全く異なるゾーンレスデザイン(通称;クオンタム)を導入し,繊維にダメージを与えず,スムーズに解繊することでシャイブ削減に効果が大きい。

2次磨砕では精砕部に特異的刃型を有する(通称;アリゲーター)世界初のプレートパターンを導入した。特徴として,精砕部に従来にはない発想の傾斜型ダム(ランプ)を有し,遠心力で排出される繊維を横方向に移動させ滞留時間増加により繊維のエッジへの接触回数を増やしフィブリル化を促進させるコンセプトにある。

結果,品質向上としてシャイブカット率50%削減と裂断長70%向上,比引裂度80%向上を実現できた。

同時に省エネ効果として磨砕電力原単位20%削減を達成した。

更には操業条件の最適化を追究し,従来の磨砕濃度よりも高濃度化を図り,1次2次の電力負荷バランスを変え(1次磨砕負荷を従来よりも20%軽減,2次磨砕負荷を従来よりも25%増加)プレートの仕事量を1次RFR,2次RFR各々のプレートの役割にあった最適条件を確立した。その結果,プレート性能を最大限引き出すことに成功し更なる品質向上と省エネを実現できた。この成果により抄紙工程における紙質向上に寄与している。

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