2020 年 74 巻 7 号 p. 710-714
地球温暖化対策を適正なコストで実現するという,企業命題に取り組む紙パルプ産業各社に対し,当社は,ボイラー排ガスを熱源としたエネルギーの高効率回収システムを提案する。化石燃料由来のボイラー排ガス中に含まれる硫酸成分は,特に露点以下の温度域においてプラント設備に深刻な腐食を招き,低温域でのエネルギー回生に見合う設備投資効果が得られない主因となっていた。一般には錆び難いといわれているステンレス鋼やニッケル系合金ですら,露点を下回る温度域の腐食性雰囲気における熱回収用途では,残念ながら長寿命を期待できなかった。Air Frohlich Engineering社は,この困難な課題に対し,PTFE,PFA或いはFEPなどのテフロン系合成樹脂材料を採用した,低温域でのエネルギー回生専用の耐酸熱交換器を開発した。
本稿では,化石燃料の高効率運用による省エネルギーを実現する,各用途別の熱回収システム構築事例を示し,更にボイラー排熱回収によるエネルギーコストの削減効果,CO2排出量削減効果についても述べる。