紙パ技協誌
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CNF特集
ザンテート化セルロースナノファイバーの開発
─実用化に向けての取り組み─
中坪 朋文
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ジャーナル 認証あり

2021 年 75 巻 2 号 p. 105-108

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抄録

パルプを化学的あるいは機械的処理により,幅がナノメートルオーダーまで解繊することによりセルロースナノファイバー(CNF)は得られる。CNFは,高強度・高弾性,低熱膨張,分散液の特異な粘度特性などの興味深い特徴を有し,広範な用途に応用可能な次世代素材として注目を集めている。

当社ではパルプからセロファンを製造しているが,その製造工程の中間生成物であるセルロースザンテートから,ザンテート化セルロースナノファイバー(XCNF)が効率的に得られることが分かり,さらに,XCNFのザンテート基は簡単な処理で脱離させ,無置換のセルロースナノファイバー(RCNF)に再生することも可能である。

当社CNFの実用化に向けて,当社CNF(特にRCNF)について,物性の評価を行った。RCNFは増粘剤として知られるヒドロキシエチルセルロース(HEC)よりも高い粘度を示し,さらに,HECよりも温度依存性が低く,増粘剤として有効であることが示唆された。また,RCNFは乳化性能も優れており,多くの油状物質を低濃度で乳化を維持する効果があることも分かった。その他,RCNFは分散安定性や有機溶媒中にも分散可能であることが分かった。今後,これらの特徴を活かした実用化を現在進めている。

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