紙パ技協誌
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CNF特集
リン酸エステル化CNFの製造と応用展開
櫻井 みづき
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2022 年 76 巻 2 号 p. 103-107

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抄録

持続可能な社会の実現に向け,木質バイオマスの多面的な利用が期待されている。なかでも,樹木の主要構成成分のひとつであるセルロースに由来する新規ナノ材料として,セルロースナノファイバー(CNF)が注目を集めている。当社では,木材パルプ中セルロース分子の一部の水酸基にリン酸基を導入し,得られたリン酸エステル化パルプを機械処理する独自のCNF製造方法を確立した。得られたリン酸エステル化CNFは高収率で完全ナノ化(幅約3nmへの微細化)しており,その水分散液は高透明かつ高粘性でpH 3-11という幅広い液性でも安定している。また,リン酸エステル化CNFの水分散液を脱水,乾燥させることにより,CNFが緻密に絡まったCNF透明シートを形成することが可能である。このシートは高い透明性と強度を有し,熱寸法安定性にも優れている一方で,紙のような柔軟性も有している。当社では,実用化推進のため,水分散液やシートの実証プラントが稼働中である。実用化の第一段階として,水分散液は化粧品用増粘分散剤やコンクリート圧送用先行剤,シートは卓球ラケット用素材などの用途で製品採用されている。さらに,リン酸エステル化CNFの改質により有機溶剤中への分散を可能とした。このCNFはパウダー化可能で,その溶剤分散液は水分散液と同様に透明性や粘性を有する。これにより,溶剤系の用途への適用可能性が高まった。我々は今後もリン酸エステル化CNFの特長を活かし,更なる用途開発を進めていく。

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