抄録
牛乳の普及は明治時代に始まった。当初は輸送缶や金属製の小容器で販売されていたが,1889年にガラス瓶が登場し,その後経済成長期の牛乳消費量の増加に伴い紙パックが急速に普及した。合成樹脂の規格基準はこの紙パックの普及に合わせて整備された。
2020年に法改正されるまでは,乳等容器包装の規格基準は乳等省令で管理され,他の食品容器包装は告示第370号で管理されており,乳等の食品とその他の食品の容器包装の規格基準には不整合や矛盾点が指摘されていた。
この課題を整理するために,2000年前後から厚生労働科学研究において食品容器包装に使用される化学物質の安全性に関する研究が進められ,また2010年頃からは法改正の方向性を決める有識者会議が開催されてきた。
2020年6月には食品衛生法にポジティブリスト制度が導入され,12月に乳等省令の容器包装規格基準が廃止された(令和2年厚生労働省令第194号)。同時に告示第370号の中に用途別規格の中に乳等容器包装の規格基準が新設された(令和2年厚生労働省告示第380号)。この改正では,用語の修正などを除けば規格基準自体に大きな変更はなかったが,一か所にまとめることで不整合や矛盾が明確化され,その後の乳等容器包装の添加剤規制の見直しを容易にした。
残された課題解決のために,一般社団法人日本乳容器・機器協会は乳業団体と協力して使用樹脂の制限の見直しを含む具体的な要望をまとめ厚生労働省へ提出している。また厚生労働省では,2022年より食品容器包装に関係する事業者団体や,試験・研究機関,行政関係部署と意見交換を行いながら用途別規格改正案の作成に取り組んでいる。