紙パ技協誌
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省エネルギーⅠ
国際水素サプライチェーン実現に向けた川崎重工業の取り組み
塔下 晃州
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2023 年 77 巻 6 号 p. 500-506

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抄録

2050年までに社会全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「脱炭素化社会」達成のため,化石燃料の代替となる再生可能エネルギーの活用が求められている。しかし再生可能エネルギーは発電量が天候などの自然環境に左右されるため安定した電力供給が難しい,エネルギー密度も小さい,資源投入や土地利用負荷は大きくならざるを得ないなどの課題があるため,脱炭素化社会への切り札として水素エネルギーへの期待と関心が高まっている。川崎重工業は水素を「つくる」,「はこぶ」,「ためる」,「つかう」のサプライチェーンの上流から下流までのコア技術を保有する唯一の会社であり,海外未利用資源から水素を製造し消費地である日本へ輸送して活用する技術開発を早くから進めてきた。水素を「つくる」,「はこぶ」,「ためる」において,当社は神戸液化荷役実証ターミナルに国内最大規模となる液化水素貯蔵タンクを建設しただけではなく,世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」も建造した。2022年2月に当社は豪州ヴィクトリア州ラトローブバレーの未利用褐炭から製造した液化水素を豪州から日本まで輸送する世界初の海上輸送試験にも成功した。水素を「つかう」において,当社は神戸ポートアイランドに水素と天然ガスを燃料とする1 MW級ガスタービンを核とする熱電併給設備を設置して,2018年4月に100%水素の燃焼を使用したガスタービンによる近隣の公共設備への世界発の熱電供給に成功した。当社は今後,実証試験から得られた知見を基に大型化の技術開発を行い,2030年の水素商用化に向けて,2020年代後半を目途に商用化実証を行う予定である。

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