紙パ技協誌
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77 巻, 6 号
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省エネルギーⅠ
  • エネルギー委員会
    原稿種別: 会議報告
    2023 年 77 巻 6 号 p. 497-499
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
  • 塔下 晃州
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 500-506
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    2050年までに社会全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロとする「脱炭素化社会」達成のため,化石燃料の代替となる再生可能エネルギーの活用が求められている。しかし再生可能エネルギーは発電量が天候などの自然環境に左右されるため安定した電力供給が難しい,エネルギー密度も小さい,資源投入や土地利用負荷は大きくならざるを得ないなどの課題があるため,脱炭素化社会への切り札として水素エネルギーへの期待と関心が高まっている。川崎重工業は水素を「つくる」,「はこぶ」,「ためる」,「つかう」のサプライチェーンの上流から下流までのコア技術を保有する唯一の会社であり,海外未利用資源から水素を製造し消費地である日本へ輸送して活用する技術開発を早くから進めてきた。水素を「つくる」,「はこぶ」,「ためる」において,当社は神戸液化荷役実証ターミナルに国内最大規模となる液化水素貯蔵タンクを建設しただけではなく,世界初の液化水素運搬船「すいそ ふろんてぃあ」も建造した。2022年2月に当社は豪州ヴィクトリア州ラトローブバレーの未利用褐炭から製造した液化水素を豪州から日本まで輸送する世界初の海上輸送試験にも成功した。水素を「つかう」において,当社は神戸ポートアイランドに水素と天然ガスを燃料とする1 MW級ガスタービンを核とする熱電併給設備を設置して,2018年4月に100%水素の燃焼を使用したガスタービンによる近隣の公共設備への世界発の熱電供給に成功した。当社は今後,実証試験から得られた知見を基に大型化の技術開発を行い,2030年の水素商用化に向けて,2020年代後半を目途に商用化実証を行う予定である。
  • 長谷川 直人
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 507-512
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    弊社グループでは,2021年10月に“MISSION NET ZERO”を宣言し,弊社グループのCO2排出量(Scope 1,2),及び弊社グループ製品の使用によるお客様のCO2排出量(Scope 3の削減量にCCUSによる削減貢献分を加味したもの)をいずれも2040年までにネットゼロとする目標を定め,エネルギーの供給側と需要側の双方に関して,カーボンニュートラルに向けた取組みを実施している。
    本報では,供給側に対する取り組みのうち,紙パルプ業界向けの「既存インフラの脱炭素化」「水素エコシステムの実現」について弊社グループの取組を俯瞰的に紹介する。既存インフラの脱炭素化については,主に水素とアンモニアを燃料とした機器の開発状況を紹介し,水素エコシステムについては,弊社高砂水素パークの取組みについて紹介する。さらに,自家発のカーボンニュートラルに向けた2つの取組み(エネルギーバランスの診断・改善,自家発設備を取り巻く困りごとの解決)についても紹介する。
    設備の計画については,お客様の中長期的な経営目標やニーズをもとに,工場ごと,自家発設備ごとにお客様目線に立った計画とすることで設備の価値を高め,結果として長くサステナブルにご使用頂ける設備となるよう弊社もサポートしてゆく所存である。
  • 片山 司, 吉田 令, 土棚 政人
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 513-517
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    昨年のCOP27におけるCO2削減,脱炭素化の流れに加えて,ロシアのウクライナ侵攻は世界的なインフレ,エネルギー,サプライチェーンの危機を引き起こしている。
    クラフトパルプ製造工場においては,供給されるバイオマスの50%は,グリーンエネルギーとして活用されるため地球に優しいプロセスと言える。しかし,ここには,まだ多くの改善の可能性を秘めている。個々のプロセスからなる製造ラインを融合,最適化することで,省エネルギー,創エネルギーが可能である。連釡にベーパーリボイラー,更に新技術のDEvapエバポレーターを組込み,より高い濃度と温度の黒液をエバポレーターへ供給・融合することでエネルギー効率を向上させる。アンドリッツ社製エバポレーターは,内蔵型ストリッパー,ラメラセグレゲーション技術により,コンデンセートを全量回収する。従来,未晒洗浄水や苛性化設備の希釈水加温に使用していた低圧蒸気の使用量を低減し,エバポレーターはクローズド化され,排水処理設備の負荷が低減されることとなる。MVR式エバポレーターは,蒸気がボトルネックの工場においては工場内で新たに蒸気を生成することなくエバポレーターの改善に寄与する。HDユニット(高濃度エバポレーター)により,黒液を~85%DSの高濃度にすると共に高濃度の黒液を燃焼する回収ボイラー技術を確立し,高い発電効率を可能にしている。諸外国では老朽化した回収ボイラーを停止し,新たにアンドッツのHERB回収ボイラーを導入することで,発電量を増大化するとともに,化石燃料の使用停止と売電化を図り,工場の収益性に大きく貢献している。
    本稿は,アンドリッツ社で取り組んでいるエネルギー回収・融合技術の一部ではあるが,これらについて記述する。
  • 田口 和人
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 518-522
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    環境問題への意識の高まり,燃料価格の高騰を背景に,レンゴー株式会社利根川事業所では木質チップ,RPF,廃タイヤといった固形燃料3種を混合して燃料とするバイオマスボイラを新設した。バイオマスボイラから得られる蒸気条件は既設ガスボイラと同等とし,既設ガスボイラを予備缶とした。
    それまで使用していた天然ガスを固形燃料にかえたことで予期せぬトラブルに見舞われた。特に,高圧蒸気ライン接続から既設ボイラとの切替え作業や,廃タイヤのワイヤーに起因する炉内への金属異物堆積は大きな問題となったが,炉底からの燃焼一次空気量の調整やエリアごとの空気量バランス変更、燃料の品質チェックを行うことで解決することができた。現在のところ安定した操業ができているが,流動層の砂の流出問題や,今後の連続操業期間の見極めなどが課題となっている。
    バイオマスボイラの稼働率向上に伴い当事業所のCO2排出量も減少し、当初の計画通り年間90,000 tのCO2排出量削減を達成できる見込みだ。
  • 石川 翔也
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 523-526
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    世界的な平均気温の上昇,海面上昇等の様々な気候変動が起こり,環境問題への関心が日増しに高まる中で,温室効果ガスの排出量の削減は世界的な重要課題の1つとなっている。
    2020年秋に政府が宣言した「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け,丸住製紙㈱大江工場のある四国中央市でも「四国中央市カーボンニュートラル協議会」が設立され,企業としても新しい燃料の活用やCO2の回収に取り組む必要があるという認識で様々な対応を進めている。
    また,省エネ法においても年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減が求められ,原燃料の高騰や円安の影響もあり,省エネ活動の取り組みはCO2削減だけではなく,生産コストの削減という面でも取り組まなければならない活動となっている。
    本稿では,大江工場の省エネ活動として流動床ボイラーの助燃用バーナーの冷却用蒸気を燃焼用エアーに置き換える取り組みについて紹介する。
  • 間杉 聡
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 527-531
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    製紙業において,省エネ活動は環境対策及びコスト削減において,有効な手段である。しかしながら近年では毎年設定している省エネ目標の達成が厳しい状況にある。そのような中でも,より省エネメリットを上げる為に省エネルギー管理委員会のメンバーを中心に社員の省エネ意識の高揚,新規案件の発掘に取り組んでいる。本稿では当工場が実施してきた省エネ事例を紹介する。
    6号抄紙機ではクリーナーを低差圧型に変更することで,クリーナー送りポンプの電力負荷低減を図った。2次クリーナー10本で53 kW,1次クリーナー26本にて136 kWの削減となった。
    6号抄紙機LB叩解チェストバイパス化を行い,LB叩解チェスト回流機の停止,ミキシングチェスト送りポンプの停止による電力負荷低減を図った。回流機で21.6 kW,ポンプで24.9 kWの削減となった。
    1号抄紙機ヤンキードライヤーでは大量のブロー蒸気が全て熱交換器に流入し蒸気ロスが発生している状況だったが,サーモコンプレッサー,フラッシュタンク等を設置し自己循環によるドレン抜け改善・省エネを図り,蒸気原単位で0.24 t/tの削減となった。
    N1号抄紙機ドライヤドレネージフローは,設置当初から約30年大きな改造がなされておらず,ドレネージメーカーに調査を依頼したところ,温度の高いドレンが大気解放のドレンタンクに回収されており,熱ロスが発生している可能性が高いという見解を得た。より多く蒸気を削減できるフローを検討し,2022年11月に改造を行い,現在効果の確認中である。
  • 大井 翔太
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 532-537
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    2020年から始まった新型コロナウイルス感染症拡大,2022年のロシアによるウクライナ侵攻に伴う原油・液化天然ガス高騰など製紙業界を取り巻く環境はより一層厳しいものとなっている。このような情勢に対応するにあたり,省エネ活動はCO2削減のみならず工場収益を支える大きな柱となっている。本稿では,当工場一丸となり取り組んだ省エネ活動「回収工程におけるキルンの省エネ対策」及び「2号ボイラー押込通風機の高効率化」について紹介する。
    「回収工程におけるキルンの省エネ対策」では,石灰焼成度の管理方法変更,誘引ファンの空気量削減対策,バーナーの空気比率変更による入熱量アップによりキルンの焼成工程を最適化した事例と硫化度アップにより白液の製造に必要な生石灰の量を減らし,キルン生産レートダウンによって重油を削減した。
    「2号ボイラー押込通風機の高効率化」では,用途に合わせた独自の羽根形状,吸込み形状の最適化,既設ケーシングが流用可能であり,イニシャルコストを抑え,最大の省エネ効果を得ることができた高効率ファン(日本機械技術㈱製)による電力削減事例を紹介する。
総説・資料
  • ―回収ボイラー用スートブロワACE―
    山本 崇平, 花澤 貴裕, 萩原 幹児
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 538-542
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    2022年夏現在及び以降,国内製紙工場はエネルギー関連について非常に困難な状況にあると思われる。課題としてはCOP26にて決定されたCO2の排出制限目標への対応,基盤産業である製紙工場に対する顧客からの石炭削減への強い要求,急激に高騰する化石燃料コスト(石炭,原油,天然ガス),不安定な国際事情や円安による急激に高騰する原材料コストが上げられる。国内製紙工場では工場の状況に基づいてCO2削減に向けたエネルギー転換及びコストダウンへの厳しい対応が求められている。顧客が置かれている状況に対応可能なアンドリッツ社の技術の一部を紹介する。又,IT技術として回収ボイラーに使用されるスートブロワにアンドリッツ社特有の技術であるスートブロワACEを紹介する。
    技術内容としては,製紙工場内にあるKP工程以外の技術に関するものとKP工程に関連したものに分けて紹介及び説明する。
    KP関連ではエネルギー発生源である黒液を処理するエバポレーターと回収ボイラーについて取り上げ,エバポレーターや回収ボイラーのアップグレードは,CO2削減の効果としては大きなエリアである事を説明する。
    ヨーロッパ紙パルプ業界ではCO2削減に早くから取り組んでおり,アンドリッツ社は,顧客要望に合わせた解決策をご提案しており,同様のご提案を日本国内の顧客にもご紹介している。
    今回はアンドリッツ社の技術スートブロワACEを含めた一部の技術をご紹介するわけだが,ACEは大きな設備投資も必要なく,大きなメリットを得られる可能性がある。今後もこのような海外の新技術を国内の製紙工場様にご紹介及び導入の手助けをさせていただく所存である。
  • 西原 禎朗
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 543-548
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    国内の製紙業界においては,2030年のCO2削減目標に向けてプラントの省エネ化が模索されている。バルメットは世界的に包括的なサステナビリティ事業を展開しており,バルメットの技術の使用段階におけるCO2排出量の削減を目指し,技術開発を進めている。
    蒸解プロセスにおける省エネ化の例として,大気圧型浸透釜Valmet ImpBinの導入や,既設1ベッセル蒸解釜のValmet OptiCookへの改造が挙げられる。これらの改造はいずれも,チップへの低温,長時間での十分な薬品浸透により,高収率な蒸解の実現を目指すものであり,蒸解温度も低下するために蒸気使用量の削減に繋がる。
    又,洗浄ラインにおける省エネ化の例としては,プレッシャーディフューザープロセスへのDiConnの導入や,プレス洗浄機Valmet TwinRoll Press Evolutionの導入が挙げられる。前者はPDWでの高温での洗浄を実現することに因り,洗浄効率の向上と共にC8抽出液の温度が上昇,フラッシュサイクロンでの蒸気使用量の削減に繋がる。後者は,未晒洗浄ラインの最終段に設置することにより,洗浄効率を保ちつつ洗浄水使用量を削減すると共にエバポレータ方面へ送られるBL量を削減することで蒸気消費量の削減効果を見込むことが出来る。
    その他,プラントの新たな収益へつながる設備として,バルメットが提供する蒸解プロセスからのリグニン回収及びメタノールの回収設備が挙げられる。前者で回収したリグニンは,バイオ燃料として使用可能であると共に,高付加価値化により,プラントの新たな収益源になることが期待できる。後者においては,NOx及びSOxの含有量を抑えた液体メタノールが回収可能であり,燃料用途や販売用途での活用が期待できるものである。
  • 紙パルプ試験規格委員会
    原稿種別: その他
    2023 年 77 巻 6 号 p. 549-551
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/01
    ジャーナル 認証あり
    JIS P 8150 紙及び板紙 -拡散反射率による色の測定方法- の改正を行ったので,改正内容について報告する。
    JISは,鉱工業品などの品質,性能及び試験方法を定めた国家規格であり,社会的環境の変化に対応して,改正される。また紙及び板紙の国際的な商取引において,試験方法に関する混乱が原因となり不必要な貿易障害を生じないよう,日本産業規格と対応国際規格との国際整合を行う。JIS P 8150は,紙及び板紙の色の測定方法を規定しており,対応国際規格から技術的な内容を変更することなく,2004年に制定された。その後,対応国際規格は3回の改訂が行われたため,JIS P 8150は対応国際規格との整合性が不十分となった。そこで,紙パルプ試験規格委員会ではJIS P 8150の対応国際規格との整合性を保つために,JIS P 8150の改正に取り組み,この改正が経済産業省から2023年3月20日に公示された。
    この規格の2004年版から2023年版への主な変更は次のとおりである。
    ・タイトルを更新し,「室内昼光条件」を追加した。
    ・蛍光増白剤を含む試験片を測定する測定機器の校正手順を詳細に記載した。
    ・波長帯域幅を補正する機能を持つ装置を対象にした重価係数の一覧表を追加した。
    ・読み取りは0.05単位から0.01単位に変更し,数値の丸め方JIS Z 8401を削除した。
    ・編集上およびその他の変更を行った。
    本文では,規格の概要と変更内容について説明を行った。
シリーズ : 大学・官公庁研究機関の研究室紹介 (151)
知財散歩道 (144)
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