2024 年 78 巻 4 号 p. 295-300
紙パルプ業界の防虫防そ管理を適切に進めていくには,各種モニタリングデータの活用と対策立案に関して十分に効果や効率を検討する必要がある。
まず,モニタリングデータの活用においては捕虫器等による調査結果だけでなく,他のデータを紐づけていくことが重要であり,特に「欠点検知データ」は,実際に製造ラインや製品に混入しているという点から優先順位の高い情報であり,活用方法を明確化しておく必要がある。また,風向風速等の原因系に関するデータは予防的管理のために有効である。一方,各種データの活用にあたっては「守るべきエリアの明確化」などリスクベースの観点が重要となり,その評価においては相関分析などの手法を活用すると効果的な場合がある。
次に対策面については,工場で捕獲されている昆虫の特性に基づいて検討していくことが大前提となる。そのうえで,特に外部侵入性の飛翔昆虫については,外周部から製造工場への接近防止,外周部から製造工場への侵入防止,工場内での昆虫拡散及び重要ラインへの接近防止,工場内での内部発生防止,という昆虫移動経路の段階に沿って対策を組み立てていくと考えやすい。そして各段階の対策には捕獲や殺虫,間仕切りや送風,5Sの徹底などがあるが,それぞれにメリットだけでなくデメリットやリスクなども十分に考慮したうえで選定していくことが重要である。