紙およびコーテッド紙の表面あらさの実態を数値的に把握するため, 触針計により表面あらさ曲線を測定し, 曲線のもつ基礎的意義および数値化に関し, 表面の顕微鏡観察に立脚する検討を加えた。その結果は次の通りである。
(1) 拡大倍率を同じくして触針の走査跡を走査電子顕微鏡にて観察し, あらさ曲線が紙表面の繊維間くぼみをかなり正確に拡大表示していることを認めたが, なお紙表面の微細な構造が触針のスクラッチングにより, かなり破壊されることに注意する必要がある。
(2) 抄紙方向およびこれに直角の方向について測定した表面くぼみ分布はほぼ等しいことが判明し, 表面あらさ曲線から表面くぼみ容積を算出し得た。なお, 表面くぼみの実態を知るには累積分布曲線, すなわちAbbottの負荷曲線による表現が適当である。
(3) カオリナイトを軽度に塗被した手塗紙を調製し, 塗被による表面平滑化の実態を触針法により検討した結果, 表面くぼみ容積と塗被量の関係は, 表面領域に存在する紙層内空隙の寄与を考慮に入れることにより, よく説明できることが判明した。