紙パ技協誌
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リグニン分解酵素系によるクラフトパルプの漂白 (第 2 報)
Phanerochaete sordida YK-624株の産生する粗酵素処理を導入した非塩素系漂白プロセス
土川 圭一近藤 隆一郎坂井 克己
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1996 年 50 巻 6 号 p. 899-905

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抄録

非塩素漂白プロセスによる高白色度パルプの調製を目的として, 広葉樹酸素漂白クラフトパルプに白色腐朽担子菌Phanerochaete sordida YK-624株の産生するマンガンペルオキシダーゼ主体の粗酵素処理と過酸化水素漂白を組み合わせた処理を試みた。2回の酵素処理 (M) とアルカリ抽出 (E) 及び過酸化水素漂白 (P) を順次行ったMEMEPシークエンスにより白色度は約84%に達した。また過酸化水素処理時にEDTA前処理を行うことにより白色度90%以上のパルプの調製も可能であった。即ち, 酵素処理と化学処理を組み合わせることにより, 従来の生菌処理と比較して大幅に処理時間を短縮した非塩素漂白プロセスの可能性が示唆された。さらに, MEMP処理により得られた漂白パルプの繊維特性を検討するため, 叩解性, シート物性及び薬品定着性 (紙力増強剤, サイズ剤) を調査した。MEMP漂白パルプの叩解性及びシート強度は従来の漂白法によって得られたパルプ (OCED) にほぼ匹敵した。同一叩解度で調製されたパルプシートの繊維長分布は同じであったが, 微細孔容量の増加が観察された。ポリアクリルアミド添加による強度増加率及びアルキルケテンダイマーやロジン系サイズ剤添加によるサイズ効果の発現はOCEDパルプより優れており, これは粗酵素液処理と過酸化水素漂白の相乗効果によってもたらされた繊維内の微細孔容量の増加による薬品の定着性の増加によるものと考えられた。

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