紙パ技協誌
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有彩色染色紙における濃色化
スパッタエッチングによる紙の微細な粗面化とその光学的利用 (第3報)
福井 里司山内 龍男
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1999 年 53 巻 9 号 p. 1198-1202,054

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抄録
直接染料で赤色に染めたパルプ繊維から手抄きシートを作製し, それを種々の条件でスパッタリングして, 濃色化とその条件との関係を検討した。色の変化はL*a*b*表色系により明度差 (ΔL*), クロマ差 (ΔC*ab), 色相差 (ΔH*ab) それぞれ別個に検討した。これら表色系のパラメータはいずれもスパッタリング条件, とくにガス圧力とスパッタリング仕事量により大きく変化する。明度差に及ぼすスパッタリング処理の影響をガス圧力で大別すると, 圧力10Paでは仕事量約20J/cm2で明度差は極小値約-1を示した後仕事量の増加とともに次第に正に転じ, 一方ガス圧力1Pa以下でのスパッタリングでは仕事量の増加とともに負の明度差は増大する。クロマ差に及ぼすスパッタング処理の影響は, ガス圧力100Pa以外では仕事量にかかわらず正の値を示すが, 圧力10Paでは仕事量約20J/cm2で最大値+3を, ガス圧力1Paでは仕事量約50J/cm2で最大値+2.5を与える。色相差に及ぼすスパッタリング処理の影響はガス圧力10,100Paでは仕事量にかかわらず極くわずかの値であるが, ガス圧力1Pa以下では仕事量の増加とともに増大し仕事量240J/cm2で約+3を与える。以上のようにスパッタリング処理による有彩色染色紙の濃色化 (負の明度差および正のクロマ差を与える) 傾向は大略無彩色染色紙と同様であり, スパッタリングにより生じる繊維表面の微細構造がもたらす濃色化と, 一方染料に富むと考えられるパルプ繊維表面層の削除および熱変性に基づく淡色化の相反する作用に左右されていると考えられる。有彩色染色紙において負の明度差と正のクロマ差が同時にかつ最も大きく生じて, さらに色相差がほとんど無い最適な濃色化条件はガス圧力10Pa, スパッタリング仕事量20J/cm2程度と考えられる。
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