紙パ技協誌
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非木材パルプ及び古紙パルプを配合した上質紙のライフサイクルインベントリー分析
中澤 克仁片山 恵一桂 徹坂村 博康安井 至
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2001 年 55 巻 6 号 p. 838-852,024

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抄録

非木材パルプおよび古紙パルプを配合した上質紙のライフサイクルにおけるCO2, SOx, NOx, 焼却灰のようなインベントリーにおける環境負荷を研究した。本研究において, 木材パルプや古紙パルプに関するインベントリーデータは, 三菱製紙八戸工場で収集された。非木材パルプに関するインベントリーデータは, コロンビアで製造されたバガスパルプのデータと日本国内で製造されたケナフパルプのデータが使用された。木材パルプに非木材パルプや古紙パルプを混合して作られた上質紙における環境負荷と, 木材パルプ100%から作られた環境負荷が比較された。
バガスパルプを配合した上質紙のライフサイクルにおけるCO2排出量は,(ビスの焼却により排出されるCO2排出量除けば) 100%木材パルプから作られた上質紙のものと同等であった。ここでのビスは, 農業生産物とされる場合もある。ケナフパルプは, 黒液回収設備が整っていない小規模工場で製造されたため, ケナフパルプを配合した上質紙のライフサイクルにおけるCO2排出量は, 他種の上質紙のものよりも多かった。古紙パルプの場合, 上質紙における古紙パルプ配合量を増加させることで, 化石燃料使用が増加し, その結果CO2排出量が増加した。SOxの排出については, 古紙パルプを配合した上質紙における排出量が他のパルプの排出量よりも少なかった。NOxの排出については, パルプ種による排出量の差は小さかった。どの上質紙においても焼却灰の排出については, 上質紙製造プロセスで使用される石炭からの石炭灰と, 排紙の焼却処理プロセスからの焼却灰がほとんどであった。
今後さらに詳細な研究を行うために, 植林・栽培における土地利用形態や農業廃棄物利用を考慮したインベントリー分析が望まれる。

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