紙パ技協誌
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音響信号による設備監視
音響診断技術とその適用事例
寺島 真介
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2003 年 57 巻 6 号 p. 870-877,024

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抄録

日本の工業界では, コスト低減のために, プラントのさらなる自動化, 省力化運転に対する要求がかなり強い。機械異常の監視や設備診断は, 振動法に代表される診断技術と人の五感でのいわゆる熟練により行われているが, それぞれの設備から発生する音響信号を機械異常の監視や設備診断の自動化・省力化に利用することは, 聴覚により様々な設備の異常を日常的に発見していることからも, 期待されるところである。
モータやポンプに代表される回転機械の軸受け部の異常や配管からのガス漏洩など, 動機械, 静機械共に異常の発生とともに可聴域・超音波域の様々な異音が発生することはよく知られているが, 人の五感では異常の判定に個人差が大きく, 現場の騒音にかき消され異音を捉えられない場合もある。五感によらず暗騒音のなかで, 異音成分のみを計測することができれば, 音響信号を用いることにより設備管理の様々なメリットが生まれる。
プラントなどの暗騒音のある中で, 対象とした設備から新たに発生した異音成分だけを分離・抽出する技術をIF-ASSETと呼んでいる技術により, プラントの暗騒音の中でのモータやポンプなどの回転機械の異常や配管からのガス漏洩発生の検知に成功している。IF-ASSET技術とは, 暗騒音の影響をなくすための超指向性集音技術としてパラボラ集音器を用い, 測定した音から通常時として記憶しておいた作動音を含めて, 異常検知に不要な雑音成分を取り除き異音だけを強調して捉えるために, 信号処理技術として逆フィルタ法を用いている。本稿では現場巡回で5年間IF-ASSET技術を使って回転機械から発生している音響信号の判定を重ねてきた中で異常を発見した事例の一部も紹介する。

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