紙パ技協誌
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SAPとミクロフィブリル状セルロースの複合構造体に関する研究 (第3報)
SAPとミクロフィブリル状セルロースの複合構造体に関する研究
鈴木 磨飯塚 堯介
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2003 年 57 巻 6 号 p. 893-909,025

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抄録

SAPとMFCの2成分を混合溶媒系に分散して得られる分散スラリーから高吸水性のSAP/MFC複合体を製造するシステムに関して, 混合溶媒中で示すSAP及びMFCのそれぞれの単独挙動については「アクリル酸系SAPの親水性混合溶媒中における膨潤, 凝集挙動に関する研究」を第1報で, 「水と有機溶媒との混合溶媒系におけるMFC及びBCの分散安定法に関する研究」を第2報で本誌に報告した。
本報告ではSAPとMFCの共存状態のスラリーについて, その安定する条件について検討した結果, 次のような結果が得られた。
1) SAPとMFCの共存効果
・MFCはその分散液の示す高粘度効果によるSAPの凝集を防止する。
・MFCは微細繊維形状を保って分散しているため, SAP粒子相互の集団的接合を防止し, 粘度効果と相俟って均一流動性を維持する。
・SAPは分散媒体中の水分を選択的に吸収し, 1.5~2.2倍膨潤する性質を持っているが, MFCと共存させるとMFCはその高い抱水性により分散媒体中の水分を保持するためSAPの膨潤を防止する。
・MFCはSAPの膨潤を防止することによって分散媒体組成を長時間に渡って変化させない。
2) スラリー調整条件の検討
スラリー調製手順
・MFCの水分散液をエタノール/水分散媒体に添加して所定のMFC分散液を調製する。
MFC分散液にSAPを添加分散させてSAP/MFC共分散スラリーとする。SAP, MFCの濃度範囲
・SAPとしては表面架橋処理を行い, 球状の形状を持つ逆相懸濁重合で得られるSAPを選択した方が, 分散安定領域が広い。
・SAPの共存限界濃度は20~40%である。
・MFCの共存限界濃度は0.4~1.0%である。
SAP/MFC共分散スラリーの経時安定性とシート成形性能
・SAPの粒径, 比重の影響が大きい。
・SAPの粒径が大きく影響する原因はSAPが媒体中の水分を選択的に吸収して膨潤するためである。このSAPの膨潤度は前述したようにMFCを共存させることにより大幅に抑制される。
・膨潤度は温度効果が大きく, 特に25℃ 付近になると大きく膨潤するので, 15℃ 以下にするのがよい。
・膨潤度にはエタノール/水比, SAP濃度も影響する。エタノール/水比については60/40になると膨潤度が大きくなるので, 水比は40%以下にすべきである。

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