我々は、変形性関節症(OA)および関節リウマチ(RA)患者の滑膜組織から滑膜細胞を調製し、分譲している。ここに本細胞の軟骨分化能を調べ、間葉系幹細胞(MSC)としての研究利用について検討した。OAおよびRA由来滑膜細胞は、分化誘導試薬を添加し三次元培養した。形成されたOA由来滑膜細胞のスフェロイドの直径は対照と比べて 1.3 mmに増大し、軟骨分化マーカーのアグリカン、II型コラーゲンおよびSOX9 mRNAの発現が全て増加し、II型コラーゲンタンパク質も産生していた。一方、RA由来滑膜細胞のスフェロイドは、大半がOAと同様に直径が増大し軟骨分化マーカーを発現するが、一部は直径が縮小し、それらのアグリカンmRNAは検出されたがII型コラーゲンの発現はみられずSOX9 の発現も増加しなかった。以上より、RA由来滑膜細胞の軟骨分化能は試料間に差があるが、OA由来滑膜細胞は安定して高い軟骨分化能を持つことが示唆され、MSCとして軟骨分化に関する研究に有用であることが示された。