日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
新潟県中越沖地震における養護教諭の実践活動と学校保健室の機能について 養護教諭へのインタビューによる質的分析から
佐光 恵子中下 富子伊豆 麻子金泉 志保美牧野 孝俊福島 きよの鹿間 久美子
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2011 年 58 巻 4 号 p. 274-281

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抄録

目的 新潟県中越沖地震による震災直後から学校再開までの学校教育現場における養護教諭の実践活動の実態を明らかにするとともに,災害時の保健室の機能を検討し課題を明らかにすることである。
方法 新潟県中越沖地震の中心的地震被災地である N 県 A 市の公立学校に勤務する全養護教諭50人を対象に,A 市教育委員会,校長会ならびに A 市養護教諭研究会の許可を得たうえで,同市の養護教諭研修会において調査依頼を口頭および文書にて実施した。後日,返信用封書をもって承諾書の回答をえた養護教諭11人を対象に半構成的面接法によるインタビュー調査を実施し,質的な内容分析を行った。
結果 被災直後から学校再開までの約40日間の養護教諭の実践活動は 7 つのカテゴリー,「避難所への保健室備品提供と緊急応急的な対応」,「児童生徒の安否確認と健康観察」,「児童生徒の心のケア」,「衛生管理と感染予防活動」,「避難所での継続的支援と他職種との連携」,「学校再開に向けて保健室復元」,「教職員の健康管理」に整理された。課題として,「保健室の環境整備」,「情報支援」,「避難所の運営」,「人的支援」,「養護教諭への支援」が示された。
結論 震災時の養護教諭の実践活動は,児童生徒の安否確認に始まり,救急処置や衛生管理,感染症予防活動,心のケア等々,多岐にわたっていた。また,養護教諭の拠点でもある保健室の機能が災害には極めて脆弱であることも明らかになった。日本は地震大国であり,いつどこでも起こりうることを考えると,避難所となる学校施設における,災害時における学校保健室の機能と養護教諭の役割を明確にし,確認しておくことは重要である。

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© 2011 日本公衆衛生学会
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