組織培養研究
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[特集] 神経系細胞の培養 ―in vitro機能発現と分化の誘導―
癌遺伝子と神経系腫瘍の増殖と分化
杉本 喜憲野田 亮井川 洋二
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1988 年 6 巻 2 号 p. 55-60

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抄録
ラット褐色細胞腫由来のPC12株は, 培養系で神経成長因子 (NGF) によって神経系の細胞へ分化する。PC12細胞は, NGFだけでなく, 癌遺伝子v-ras をもつRNA腫瘍ウイルスの感染でも, 増殖を停止し, 神経細胞特異的な性質を示すようになる。私達は, v-ras をコントロールできるPC12細胞を作成し, v-ras がどのようなメカニズムで神経系の細胞へ分化させるのか研究している。v-ras の発現を誘導させると分化し, 細胞内で2種の情報伝達系のcAMPとホスファチジルイノシトール代謝の促進が認められた。v-ras 発現によるセカンドメッセンジャーレベルの増加の意義を知るためアナログのジブチリルcAMPとホルボールエステルを培地に加えたところ, 両者の共存で速やかな分化誘導が観察された。これらの事実から, v-ras は, cAMPとホスファチジルイノシトール系の複数の情報伝達系を活性化してPC12細胞の神経系細胞への分化を引起こしていることが示唆された。
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© 1988 日本組織培養学会
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