抄録
コラーゲンゲルを用いた3次元培養法を導入することにより成熟ラットのin vitroにおける末梢神経再生系を確立することが出来た。(1)in vitroに近い神経線維を伴う脊髄後根神経節の器官培養、(2) 神経線維をできるだけ神経節に近接した部位で切断した系、(3) 神経周膜を酵素処理により取り除いた系、(4) 単離した神経細胞を3次元的に集合させた系、(5) 単離した神経細胞、の5段階の培養系を確立した。この系にNGF(nerve growth factor)を作用させたところ胎生期同様の高い神経再生活性が酵素処理した神経節、3次元的に神経を集合した系でみられた。単離した神経細胞では同じ様な活性がみられなかったことから3次元的に神経細胞が集合することによりNGFによる著名な神経突起再生促進効果が発現したと考えられる。一方、サイトカイン類では、Interleukin Iβ(IL-Iβ),IL-3,IL-6,LIF(leukemia inhibitory factor)が、神経線維を伴った神経節の神経線維の切断端からの突起再生に対して再生促進効果を示したが、他の培養系では再生促進効果がみられなかった。肝細胞から分泌されている因子は神経線維の切断端からの神経再生をサイトカイン類よりも著名に促進し、しかも神経突起の生存維持効果も示した。これらの因子は神経細胞には直接作用することなく、神経細胞を取り巻くシュワン細胞、神経周膜を構成する細胞等に作用し、NGF等のニューロトロフィンの産生・分泌を促し、神経再生を促進するものと思われる、in vitroに近い系での作用発現なので、in situでも同様の機能を発現出来るのではないかと予想される。特に肝細胞分泌因子の活性が高いことから肝機能と神経系との係わり合いが示唆される。