組織培養研究
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生殖系列細胞の発生・分化過程を再現する培養系
松居 靖久
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1999 年 18 巻 2 号 p. 141-146

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抄録

いくつかの発生段階のマウス生殖系列細胞の培養が可能になっている。いずれの組織へも運命決定されていない原腸陥入前のエピブラストから始原生殖細胞が分化する初代培養系が確立され、その分化に胚体外外胚葉の働きによって誘導されるエピブラスト内の位置特異的な環境が重要であることが明らかになった。また移動期の始原生殖細胞はフィーダー細胞との共培養で増やすことができ、Steel factorを始めとしたいくつかの増殖因子の共同作用により増殖が促進されていることがわかった。始原生殖細胞から配偶子への分化は、生殖隆起の器官培養によりある程度再現できる。この場合メスでは減数分裂が進行し卵母細胞が分化するが、オスでは精原細胞以降への分化は起こらない。また生後の生殖細胞を培養することで、卵の成熟や精巣生殖細胞の減数分裂が進行することが示されている。こういった培養系により生殖細胞の発生機構の詳細がさらに解明され、また発生工学へ応用されることが期待される。

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© 日本組織培養学会
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