抄録
国立小児病院摘出扁桃リンパ組織バンクのパイロット研究報告に対し私見を述べる。今回の大きな特徴は、提供者が小児ということである。小児を含む未成年者からの試料提供の是非について、なお議論が必要ではないだろうか。基本的には大人の説明を理解できる就学時を迎えた年齢以上にするべきではないだろうか。またバンクという性格上、個々の研究内容を説明したうえで提供の承諾を得ることは不可能だが、これまでの研究の蓄積から、ある程度具体的な使用目的の提示が欲しい。現在、ヒトES細胞をはじめ生命科学研究に関連したガイドラインが国から示されているが、ヒト組織の研究利用について議論が十分に尽くされたとは思えない。組織バンクの対象となるヒト組織も広がっていくであろう現在、我が国全体で共通の議論の場を持つことが求められる。