抄録
残留リスクを認めながらも,安全の事前責任を果たすというリスクベースの社会においては,事故そのものを防ぐとともに,耐えがたい事故の責任追及を事前に回避して,最終的には,例えば,被害者救済をPL保険や労災保険に委ねることを可能とするための制度が必要である.国際規格は,この制度をグローバルな合意として展開しようとしている.何よりも重要なことは,事故の責任追及と原因追求とを独立に実行可能としている点である.すなわち,設計者は,国際規格に準拠して事前に責任を果たし,事後責任を社会の制度に委ねる.その事後責任とは,社会として果たすべき被害者救済(保険)と,技術者として果たすべき事故の原因追求と再発防止に応える責任である.国際規格は,貿易上のトラブルを回避する目的であるが,機械文明を基礎として発展する現代社会の共通の責任として,わが国にも強制規格として採用すべきである.