専門日本語教育研究
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レポート産出過程の調査
経済学部1年生を対象に
吉田 美登利
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2014 年 16 巻 p. 61-66

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抄録
本研究はレポート評価が高い学生の使う方略は低い学生のものとどう違うのかを明らかにし、その結果をレポートが苦手な学生への指導法に応用することを目的とするものである。経済学部1年生8人を対象にレポートの一部(章立て、目標規定文、はじめに、参考文献)を発話思考しながら作成してもらった。その結果、4点が明らかになった。(1)評価低は、レポート産出過程が単線的であったが、評価高はそれぞれの間を行き来して精緻化しながら書いていた。(2)評価高は既有知識によりレポートのテーマを決めていたが、評価低はインターネット検索に頼りテーマを決めていた。(3)レポート産出方略(手順、時間、文献検索法など)の獲得にはレポート学習への動機づけが大きく影響を与えていた。評価高はレポート学習への動機づけが高く、評価低は低かった。(4)評価低は、レポートというジャンルについて誤ったビリーフを持っていたが、評価高は的確なビリーフを持っていた。以上の結果について、書きながら章立てや目標規定文を精緻化していくという方略は、作文には見られずレポートに特徴的なものであることを指摘した。また、既有知識をどうレポートに利用するかに加え、良いレポートとは何かを学ぶことと学習者の動機づけに働きかけることを提案した。
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© 2014 専門日本語教育学会
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