専門日本語教育研究
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論文
中国人留学生と日本人社員への意識調査から見たビジネス日本語教育の在り方
対話による異文化コンフリクトの解決を目指して
安部 陽子
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2019 年 21 巻 p. 37-44

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抄録

 本稿の目的は、中国人留学生と日本人社員間の日本の職場における異文化コンフリクトの認識の差を明らかにすることで、解決に向けたビジネス日本語教育の在り方を提言することである。従来の研究では、留学生と日本人社員の両者の視点から異文化コンフリクトを明確化した研究は限られており、また日本人社員の属性も考慮されていないことから、本稿では、日本人社員も対象に含め留学生と同様の意識調査を実施することで両者間の認識の差の明確化を試み、日本人社員の属性が結果に与えた影響の検討を行った。まずt検定による分析の結果、両者間で認識の違いの大きい異文化コンフリクトは「日本独自の企業制度」「日本の企業文化」「仕事に対する厳しさ」「上司との人間関係」「同僚との人間関係」の5カテゴリーに分類された。その後、日本人社員の年齢と異文化への接触度という日本人社員の属性を考慮して分散分析を行った結果、サービス残業の日常化、ミスに対する許容度、頻繁な挨拶、日本人同僚との関係の希薄さの4項目が、属性に影響を受けず認識の差が大きい項目であることが分かった。考察では、現状に即した教材や指導法を教育現場に取り入れていく必要性と、対話による異文化コンフリクトの解決を目指したビジネス日本語教育への提案を行った。

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