抄録
本研究は、これまで注目されてこなかった初年次日本語専攻生向けのアカデミック・ライティング(以下、AWという)教育の試みを分析、考察するものである。具体的には、中国の大学日本語専攻課程の初年次生を対象に、母語AWと日本語AWを連携させた「調査レポート作成活動」を既有の日本語科目の応用課題として行った。参加者の調査テーマ、調査法、レポートの構成などへの参加実態を分析し、参加者が調査レポートの作成をめぐる一連のAWプロセスを経過し、研究プロセスをある程度認識できたことが確認できた。そして、参加者の振り返りに対する質的分析から、参加者は本実践を通して、能力が高まり、情意の向上、知識の獲得、学習方法の見直しができ、将来への準備を進めていると認識していることがうかがえた。分析結果から、初年次日本語専攻生向けのAW教育の可能性とあり方が示唆された。