脳と発達
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症例報告
幼児期早期に診断し得たPCDH19関連てんかんの女児例
保科 めぐみ日暮 憲道阿部 優作三島 博細矢 光亮中山 東城廣瀬 伸一
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2015 年 47 巻 4 号 p. 305-309

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抄録
 近年疾患概念が確立されたPCDH19関連てんかんは, 女児の難治てんかんの原因として重要な疾患である. 今回我々は特徴的な臨床経過から幼児期早期にPCDH19関連てんかんを疑い, 診断に至った1女児例を経験したので報告する. 症例は1歳9カ月女児. 生後5カ月時に焦点性発作が群発して出現し, 以降, 数カ月単位で発作群発を繰り返したが, 群発と群発の間には発作は出現しなかった. 発作は無熱時にも有熱時にも出現し, 1日に数10回以上と頻回であったが, 個々の発作の持続時間は数分以内と短かった. 発作は難治でありmidazolamの持続静注によって部分的には抑制されたが, 効果はしばしば不十分で, 群発は3日から2週間程持続した. 女児で乳児期に発症し, 焦点性発作の群発を繰り返すという特徴から, PCDH19関連てんかんを疑い, PCDH19遺伝子の解析を行ったところ, 2つのミスセンス変異が同定された. これらはこれまでに報告のない変異であったが, ともにタンパクレベルでの機能障害が予測される変異であり, 特徴的な臨床経過と併せPCDH19関連てんかんと診断した. 本症の病態や有効な治療法は未だ不明であり, 今後の研究成果が待たれるが, その特徴的な臨床経過と遺伝子異常により規定される「素因性てんかん」という特性から, 乳児期~幼児期早期に確実な診断が可能である. 本症を早期に診断することにより, 疾患特性に基づいた計画的な治療や適切な遺伝カウンセリングが可能となるため, 臨床的な有用性は高く, 小児神経診療に関わる医師は本症の特徴を理解しておくことが重要である.
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© 2015 一般社団法人日本小児神経学会
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