抄録
【はじめに】
昨年医療保険の改正がなされ、日数制限や介護保険との同時算定が出来ないなどの理由から、病院での外来リハの継続が困難なケースが多く見られている。それに伴い、老人保健施設(以下、老健)においての個別リハのニーズが非常に高くなってきている。そこで今回は通所利用者の中でも個別リハ提供者に対し満足度アンケート調査を実施し、当施設における個別リハの問題点、今後の課題などをまとめたので報告する。
【対象】
2007/9/1時点で当施設通所サービスを利用し、セラピストによる個別リハを提供している利用者281名。利用開始後1ヶ月未満の利用者は対象外とした。
【方法】
匿名式アンケートを独自に作成し使用。内容は基本情報、普段の生活で困難と感じている事、屋内外での移動方法、当施設を利用し始めたきっかけ、参加プログラムの満足度、個別リハを受けて実際に改善した点(移動面・身辺動作・身体面・生活面)、個別リハの満足度、その他現在のリハについて満足な点・不満な点など。
【結果】
配布281名に対し、回答は173名。回収率61.5%。基本情報では要支援1~要介護2の利用者で約80%を占めていた。普段の生活で困難と感じている事では「階段昇降を行う」、「(足の)爪を切る」、「浴槽に入る」、「掃除をする」、「公共機関の利用」などが困難であると多くの利用者が回答していた。屋内での移動は「てすりや家具を伝って歩く」、屋外での移動は「杖を使用して歩く」がそれぞれ最も多い回答であった。施設を利用し始めたきっかけでは「体力や運動能力の低下が気になるから」が非常に多かった。実際に改善した点では、全体を通して何か一つでも改善したと感じている利用者は146名(80%)にのぼった。しかし移動面など各項目別で見た場合、最も多い回答は「無回答」であり、利用者によっては改善した点に差があることが明らかになった。全体的な個別リハの満足度に関しては70%の利用者で「大変満足」「満足」と回答し、12%の利用者で「やや不満」「不満」と回答していた。また不満な点に関しての記載では「時間が短い」「セラピストによってやり方が違う」など具体的な点が多くあげられた。
【考察】
今回の調査により、当施設では身体機能の改善を目的に利用する場合が最も多く、また個別リハの不満点に関しても具体的な点を指摘する回答が多いことからも、個別リハに対する強いニーズが伺えた。当施設の個別リハ参加者は、介護度や屋内外での移動面の結果を見ても、比較的自立度が高い利用者を中心に構成されていることが分かる。この中には前述した病院での外来リハの継続を目的として利用している利用者が多くいると推察される。満足度は高くとも実際には何も改善していないと感じている利用者がいることも事実であり、質・量共に利用者に十分満足していただけるような体制を確立・維持していく事が課題である。