抄録
本論文では、クラウドソーシングの発注文書の言語表現のうち、発注文書の閲覧者に業務内容を伝える際に用いられる「ください」と「いただきます」を対象に分析を行った。分析にあたっては、閲覧者のうちの応募者の割合を示す「応募率」が高い文書を「よい文書」とした。まず、全体として「いただきます」は応募率が高く、閲覧者に与える印象がよいと考えられる。次に、「ください」、「いただきます」の前につく動詞の語種別の応募率では、「和語+ください」の応募率は低かったが、「漢語+ください」の応募率はそれほど低くなかった。これは、漢語の動詞が表す下記の①、②の内容によるものであると思われる。「いただきます」は、和語、漢語ともに応募率が高かった。さらに、「ください」、「いただきます」とともに使われた数が上位の動詞を分析したところ、「ください」とともに使われる動詞が①受注のための手続きを表す動詞、②受注者の負担を軽減させるために使われる動詞の場合は応募率が高く、受注者に恩恵がある内容の場合は「ください」を含む表現の印象がよくなることが示唆された。一方、「いただきます」の場合、受注者の行動に制限をかけることを表す動詞の応募率は低かった。以上から、「ください」は印象がよくない例が多く、「いただきます」は印象がよい例が多いが、前接する動詞が表す内容が受注者に恩恵を与えるかどうかによって印象が変わることがわかった。