抄録
ビスフェノールA 型ポリカーボネート(PC)の両末端にトリエトキシシリル基を有するPC オリゴマー(PCS)および PCS とアルコキシシランの混合物のゾル-ゲル反応から,それぞれPC -シリカハイブリッド,PCSHM および HSPC-HM を得た。これらのガラス転移温度(Tg )は PC より高温側にシフトし,広いTg領域を示した。一方,Tg以上の温度領域で昇温に伴う貯蔵弾性率の低下が PC より穏やかであり,優れた耐熱性を有していた。また表面硬度や機械的特性にも大きな向上が認められた。一方,破断面の SEM 観察では,PCS-HM やシリカ含有率の非常に大きな HSPC-HM にさえもマクロ相分離は全く認められなかった。また,HSPC-HM フィルムは,PCS/ テトラエトキシシラン比3/7 の時,最小の酸素透過性を示した。これらの結果は,PC セグメントがシリカを架橋点として共有結合による3 次元ネットワーク構造を形成していることによるものである。一方,PCS/TEOS 組成比の異なるHSPC-HM を順次多層コーティングすることにより得られるSi- 濃度傾斜PC ハイブリッド材料は非常に大きな耐熱衝撃性を有することを,またこのシリカ面は良好な耐有機溶剤性を示した。