抄録
本稿は、日本語中級レベルの医学部留学生を対象とした「内容重視」の日本語授業の実践報告である。筆者は、学生のニーズに沿った授業設計という観点から「医療知識がない人に病気についてわかりやすく説明する」ことを目標としてプレゼンテーション授業を構築し、実施した。発表ではグループごとにテーマとなる病気を決定し、a症状b原因/予防方法c診断方法d治療方法e補足情報について発表することを課題とした。発表方法は、導入として診療場面を想定した「医師と患者のやりとり」を行い、その後、まとめや追加情報をスライドを用いた説明形式で発表することとした。発表後には教師によるフィードバックを行った。実践後に実施した学生アンケート結果を見ると、医療用語をわかりやすく説明する表現が学べたこと、「医師と患者のやりとり」によって患者と話す練習になったこと、病気に関する興味や知識が深まったことから有意義であると考えた学生が多く、本授業の実践は有用であったと考えられる。今後の課題として、医療に関する表現の確認と診療場面を想定した日本語コミュニケーション学習の授業方法の検討や発表後のフィードバックの充実の3点が挙げられる。