抄録
日本語によるアカデミック・ライティング(AW)教育は、海外の大学の日本語学科で日本語・日本文学などを専攻する学生に必須のものである。本稿では、中国国内の日本語専攻生向けのAW教材として筆者らが開発した『日本語アカデミック・ライティングと研究方法』の作成過程を報告する。本教材は、AWに必要な能力として「考える」「調べる」「書く」の三つの柱を立て、学習者が自ら立てた問いを、データに基づいて解決する力の醸成を目指している。その際、教育現場のニーズに対応すると共に、「考える」ための対話・協働活動の充実、「調べる」ための主要な研究方法の紹介、「書く」ための論文執筆プロセスのカバー、包括的なメタ認知力の向上に配慮している。また、教材の作成過程や、実際に教材を使った受講者の評価から得た課題として、適切な難易度の把握、適切な実践課題の設定、教材の作成者間および使用者間の協働、前段階の学習者への考慮の4点を提示した。