抄録
ヒト線維芽細胞の示す細胞老化は, 老化モデルとして用いられており, 老化とともに酸化傷害の増加が見られる。 細胞老化に見られる種々の現象は, ストレス誘導性細胞老化にも同様に観察され, 特に過酸化水素により引き起こされる WI-38 の細胞老化は, 酸化ストレスに着目した抗老化作用を検討するための有効な老化モデルとして用いられている。 我々は, この確立された老化モデルを用い, 冠元顆粒の抗老化作用を抗酸化作用に着目して検討した。 WI-38 を冠元顆粒で前処理し, その後過酸化水素を添加した場合, 前処理しない細胞と比較して, 活性酸素量と過酸化脂質量が有意に減少した。 それに加え, 細胞内活性酸素量を反映する細胞内グルタチオン量は, 冠元顆粒の前処理により減少した。 これらの結果から, 冠元顆粒は加齢に伴う細胞内酸化傷害の増加を軽減していることが示唆された。 さらに冠元顆粒は, 過酸化水素添加による細胞周期の G0/G1 期停止を改善し, 細胞生存率を改善した。 また, 分裂寿命の有意な上昇が認められた。 本研究により, 冠元顆粒は酸化ストレスを調節することによって, 細胞老化を遅延していることが示された。