Journal of Traditional Medicines
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Pharmacological characteristics of traditional medicine as curative 'Polypharmacy'
Takeshi MIYATA
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2004 年 21 巻 4 号 p. 155-165

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抄録

Millenniums -数千年- の歴史を持つ伝統医薬/和漢薬・漢方薬の効能は元来経験的なものであり客観的に薬効が証明されている例は従来あまり多くなかった。 いささか皮肉交じりに, もう一つの EBM (Experience Based Medicine) と言われてきた所以であろう。 私達は基礎薬理学の立場から, 代表的漢方鎮咳・去痰薬として麦門冬湯を採り上げ, その polypharmacy としての薬効・薬能ーー多彩な作用とその機序ーーを系統的・解析的に追及した。
その結果, 本稿では一部しか示さないが, 治療効果に共通する作用として抗炎症・抗アレルギー作用, 免疫調節作用, 分泌調節作用, 代謝調節作用などが関与しており, その基盤となるものは, シグナルトランスダクションにおけるクロストーク, 及び, 遺伝子の転写調節を介する細胞機能修復・活性化であることを明らかにした。 これらの成績は, 新しい生体・細胞生理機構の発見と共にその破綻・病態発生の本質に迫り, 多少なりとも疾病の予防と治療原理の確立に貢献しうると考えている。
和漢医薬学のトランスレーショナル・リサーチは, 各処方の効能に客観性を与え, より適応性, 使用性を拡げるとともに, 特に QOL を重視した慢性難治性疾患治療薬としての確立に繋がる。 これからの Millenniums を生き続けていくために, 困難を伴うが, 転写調節を介する多分子機能制御物質 (polypharmacy) としての特徴を強く意識した基盤研究, 即ち, Fundamental Evidence Based Traditional Medicine (FEBTM) が活発に展開されなければならない。

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© 2004 Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
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