抄録
魚油中の n-3 系の多価不飽和脂肪酸は抗高脂血症， 抗血栓作用および抗腫瘍効果などの生理作用が報告されている。 鮪油中では， オレイン酸， リノール酸， ドコサヘキサエン酸 （DHA） およびエイコサペンタエン酸 （EPA） などの不飽和脂肪酸はトリアシルグリセロールの形で存在している。 今回の実験では， 鮪油の抗腫瘍および抗転移作用を検討した。 鮪トリアシルグリセロール （1000 mg/kg） はルイス肺癌細胞 （LLC） を脾臓内移植したマウスにおいて， 脾臓内での腫瘍増殖を有意に抑制した。 肝臓への転移も鮪トリアシルグリセロール （1000もしくは 2000 mg/kg） の経口投与によって抑制された。 DHA は主に鮪油の脂肪酸として含有している。 遊離 DHA が LLC 細胞およびヒト微小血管内皮細胞での DNA 合成を抑制し， ヒト微小血管内皮細胞からマトリゲルによる血管腔の形成を抑制した。 結論として， 鮪油の抗腫瘍および抗転移効果は一部， 鮪油から生じた遊離 DHA による癌細胞， 血管内皮細胞の DNA 合成阻害および癌による血管新生の抑制作用に関係しているように推測された。
