抄録
薬用人参, 特に高麗紅参が生体に加えられる内的, 外的な環境ストレスを緩和し, 生体を保護するという事実は多くの研究者により, 様々な手法によって解明されている。筆者は以前よりそのメカニズムが自律神経・内分泌系を通しての, 紅参のホメオスターシス維持作用によるものであると提唱し, 基礎的あるいは臨床的にこれを証明してきた。今回6人の健康な女性に紅参末を急性投与した上で運動負荷試験を行い, 血圧・心拍数・脈圧・エネルギー消費量・心電図のST低下度などをプラセボと比較した。また運動負荷及び回復期を通じての自律神経変動の時系列エネルギースペクトルを求め, これをフーリエ解析によって時間領域のパワースペクトル密度 (PSD) に変換し, プラセボと比較した。その結果, 紅参末がプラセボに比較して運動中の循環動態を適切にコントロールして運動中のエネルギー効率を高め, また自律神経バランスを安定化させることによって生体をストレスより保護していることを本論文において報告した。