抄録
私たちは, 漢方薬についての基礎研究の成果を臨床へ還元していくことが, 東洋医学の発展のために重要であると考えている。 最近, 私たちは, 細胞生物学や分子生物学を応用し, がんの再発を予防する漢方薬をスクリーニングするための新しいアッセイ方法や, 更年期頻用漢方処方の安全性評価のための新しい方法を確立した。 これらの方法を用いた私たちの基礎研究は, 次のような新しい知見をもたらした。(1) 麻黄湯が, がん細胞の運動を抑制することにより転移を抑制すること,(2) 更年期頻用漢方処方が, エストロゲン様活性を有し, エストロゲン受容体に直接結合すること。 これらの研究は, 漢方薬の基礎研究成果を臨床へ応用するための第一歩となるものである。 麻黄湯をがん患者に用いるためには, あるいは, 更年期頻用漢方処方の安全性を提言するには, さらなる基礎研究が必要である。 現在, 私たちは, これらの成果を臨床応用するために, いくつかの新しい ex vivo あるいは in vivo のアッセイ方法を検討しているところである。