2007 年 24 巻 6 号 p. 193-199
Ayurveda で古くから薬用に供される 「Asava」 は, 生薬を発酵させて製する薬酒である。 我が国における一般的な薬酒は生薬を酒に浸漬させてつくられ, これら両者の大きな違いは発酵という過程を経ているか否かという点である。 発酵が薬酒の性質にどのように影響を与えるかを明らかにするため, 本研究では生姜と大棗を用い, それぞれから Asava 製法とチンキ剤製法により薬酒を作製し, 揮発性成分比を GC- MS により測定した。 Asava 製法については, スリランカにて調査した結果に従った。 その結果, Asava 製法で作製した薬酒の揮発性成分比は, phenylethanol が 30 % を占めたのに対し, チンキ剤製法では 2 % 以下と大きく異なっていた。 また Asava 製法で作製した生姜の薬酒はアルデヒド類 (geranial, neral) が 1 % 以下であり, 作製中に geraniol, nerol に還元されたことが示唆された。 さらに Asava 製法で作製した大棗の薬酒には, zizybeoside のアグリコンである benzyl alcohol の含有が認められたことから, アルコール発酵による配糖体の加水分解が示唆された。