抄録
アルツハイマー病治療薬であるドネペジルは臨床においてケトコナゾール (KCZ) あるいはシメチジン (CIM) の併用により血中濃度が上昇することが報告されている。 一方, 抑肝散はアルツハイマー病に伴う行動障害と精神障害 (BPSD) を改善することが報告されており, ドネペジルとの併用頻度が高いと考えられる。 本研究では, ラットにおいて KCZ 及び CIM とドネペジルとの相互作用を検討するとともに, 抑肝散がドネペジルの体内動態に及ぼす影響について検討した。 KCZ (10 mg/kg) あるいは CIM (200 mg/kg) を腹腔内投与した後, ドネペジル塩酸塩 (5 mg/kg) を経口投与したラットでは, 単独投与群と比較して血漿中ドネペジル濃度が高い値を示した。 一方, 抑肝散 (1 g/kg/日) を 7 日間反復経口投与した群における血漿中ドネペジル濃度推移はコントロール群と同等であった。 以上より, ラットにおいて KCZ 及び CIM はドネペジルの血漿中濃度を上昇させるのに対し, 抑肝散はドネペジルの体内動態に影響を及ぼさないことが明らかとなり, 臨床において抑肝散とドネペジルが薬物動態学的な相互作用を起こす可能性は低いことが示唆された。