Journal of Traditional Medicines
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Glycyrrhizin renders cells resistant to apoptosis induced by human and feline immunodeficiency virus
Hitoshi SatoSeiji KageyamaHiroshi YamamotoMasahiko KurokawaEtsuko AokiKimiyasu Shiraki
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2011 年 28 巻 3 号 p. 139-148

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抄録
グリチルリチンは細胞膜の流動性を低下させ,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)をはじめ多くのウイルスの吸着・侵入過程を阻害すると考えられている。一方で,これらのウイルスは細胞膜上の分子と結合しアポトーシスを誘導する。本研究では,HIV・ネコ免疫不全ウイルス(FIV)誘導性のアポトーシスに対抗するグリチルリチンの活性を検証した。グリチルリチンは,HIV 産生に影響しない濃度(0.15mM)で HIV によるアポトーシスを抑制した。また,グリチルリチンの抗ウイルス複製効果を無視できる FIV 感染系で,FIV 吸着・シグナル伝達系の遮断によるアポトーシス抑制効果を確認した(0.6mM)。細胞のグリチルリチン前処理法でも,FIV によるアポトーシス抑制効果が示された(P<0.05)。グリチルリチンは,非感染細胞表面の CD4 の発現を抑制したが,Fas,CXCR4,MHC class I の発現を抑制しなかった。以上から,グリチルリチンは,CD4 の発現を抑制することで HIV スパイクと細胞表面分子である CD4 とのクロスリンクを阻害しアポトーシスを抑制していると考えられた。他方,FIV は CD4 との結合が確認されていないため,グリチルリチンは CD4 以外の分子が関与するシグナル経路に影響し,FIV によるアポトーシスを抑制していることが考えられた。
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© 2011 Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
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