Journal of Traditional Medicines
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Ephedrae herba, a major component of maoto, inhibits the HGF-induced motility of human breast cancer MDA-MB-231 cells through suppression of c-Met tyrosine phosphorylation and c-Met expression
Sumiko HyugaMasumi ShiraishiMasashi HyugaYukihiro GodaToshihiko Hanawa
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2011 年 28 巻 3 号 p. 128-138

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抄録
私たちはこれまでに, 麻黄湯が血清により誘導されるヒト乳癌細胞 MDA-MB-231の運動能を抑制することを報告した。しかし,その分子メカニズムについては不明であった。本研究では, 血清中に存在する増殖因子のひとつで,細胞運動を誘導する肝細胞増殖因子(HGF)に注目し,HGF-c-Met シグナルに対する麻黄湯の効果について解析した。トランスウェルアッセイの結果,麻黄湯は HGF によって誘導される MDA-MB-231細胞の運動能を有意に抑制することが明らかとなった。 また, 麻黄湯の構成生薬の麻黄もこの運動能を有意に抑制したが,麻黄湯去麻黄及び対照処方の四君子湯は影響を与えなかった。麻黄湯と麻黄による HGF-c-Met シグナルに対する影響を確認するために,c-Met のリン酸化について調べた。麻黄湯および麻黄は,HGF によって誘導される c-Met のリン酸化を抑制したが,麻黄湯去麻黄及び四君子湯は抑制しなかった。さらに,麻黄は,c-Metのチロシンキナーゼ活性を直接抑制し,またc-Metの下流のシグナル分子であるAktのリン酸化も抑制した。我々は,麻黄湯および麻黄のc-Met発現に対する効果を調べた。c-Met 遺伝子及び c-Met タンパク質の発現は,麻黄湯あるいは麻黄で24時間処理することにより抑制された。これらの抑制効果は,麻黄湯から麻黄を除去すると消失することから,麻黄に由来することが示唆された。 本研究から,麻黄湯の運動能抑制機構として,麻黄湯が血清中に存在する HGF からのシグナルを抑制することで細胞運動を抑制している可能性が考えられた。また,その分子メカニズムは,麻黄湯の構成生薬の麻黄が,c-Met のチロシンキナーゼと c-Met の発現を阻害することで,HGF-c-Met-Akt シグナルを抑制し,HGF によって誘導される細胞運動を抑制していることが示唆された。
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© 2011 Medical and Pharmaceutical Society for WAKAN-YAKU
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