抄録
ショウガ根茎は古来種々の調製が施されてきた生薬である。 中国では宋代まで, 流水に浸した後に陶磁器内で醸したもの (発酵) を熱性の性質を有する乾姜としていた。 しかし, 現代中国では単に乾燥させたものを乾姜 (温性), 加熱したものを炮姜 (熱性) とし, 日本では湯通しまたは蒸したものを乾姜としている。 乾姜の調製方法は変わったが, 古代の乾姜と現代の乾姜または炮姜の薬効が同様であるかは検討されていない。 そこで本研究では古代の方法で乾姜を調製し, 辛味成分含量を現代の乾姜と比較した。
その結果, 古代の乾姜では 6-shogaol 含量が増加した。 加えて, 古代乾姜の辛味成分含量は 1 時間蒸すまたは湯通しして調製した乾姜とほぼ等しかった。 また, 180°Cで加熱することにより製した炮姜の 6-shogaol 含量は古代の乾姜よりも高かった。 すなわち, 現代の日本の乾姜は古代の乾姜と同様の薬効が期待でき, 炮姜は古代の乾姜以上に6-shogaolによる熱性が期待できる可能性がある。
更に, 発酵期間を長くしたサンプルは L*値 (明度) が低く, α*値 (赤み) が高かった。 それ故, 色彩は発酵度合いの指標になる可能性が示唆された。