抄録
五苓散は体内の水分代謝調節作用による生体の恒常性を維持することで, 電解質異常改善効果や腎保護作用を併せ持つ漢方方剤として知られている。 一方, アクアポリン (AQP) は水チャンネルであり生体の恒常性を維持する上で極めて重要な分子であり, 多くの疾患が AQP の機能異常を起因とすることが解明されており, AQP は病態解析ならびにその標的治療分子として注目されている。 本研究では, 五苓散の尿濃縮機能と腎組織中の AQP1-3 タンパク質発現量を 5/6 腎摘 (5/6Nx) ラットを用いて検討した。 1 % 五苓散を 8 週間投与した群では腎重量, 血清中カリウム, 尿中タンパク質量が 5/6Nx 群に比べて有意に減少した。 また, 五苓散飼料を 4 週間投与した群において尿浸透圧は低下傾向であったが, 8 週間投与した群では 5/6Nx 群と比較して有意に高かった。 腎臓の髄質内層, 髄質外層, 皮質の AQP2 タンパク質発現量は 5/6Nx ラットにおいて低下していなかったが, 五苓散群では低下していた。 さらに, 腎臓の皮質の AQP3 タンパク質発現量は, 五苓散の投与により有意に増加した。 これらの結果から, AQP タンパク質発現量が五苓散の水分代謝調節作用に関与することが示唆された。